以前、認定看護管理者養成コースで講師をしていた時、自施設において行うための看護管理実践計画書というものを受講生たちが立案するためのアドバイスをしていました。
受講生を5~6名の少人数グループに分けて、その一つ一つに講師がつくという形で進める、いわゆるグループコンサルのような形式でした。
師長などの看護管理者が集まる研修なので、看護管理実践計画の中身はおのずとチームマネジメントがメインテーマになってくるわけですが、そうすると師長さんたちの悩みの多くがスタッフのモチベーションに関することだったりするわけです。
自部署の中の課題を見出して、それを解決に導くために何をするかを計画するのですが、それらの課題を解決するためにネックになっているのがスタッフのモチベーションの低さだという人が多く、モチベーションを上げるにはどうしたらいいかというところで話が止まってしまって、課題そのものの解決法にたどり着く前に、モチベーションを上げることをテーマに選ぼうとする受講生が毎年たくさんいたのです。
講師仲間の間で、それは困った問題と捉えられていました。
モチベーションという明確な尺度のないものは達成できたかどうかの評価ができないし、ちょっとしたことで簡単に上がったり下がったりするものだからです。
でも、それをテーマとして選ぼうとする人たちは、その部分で行き詰まりを感じているわけで、だからこそそこを何とかしたいと思っているのだということもわかります。
人はモチベーションが低い状態だと、行動を起こそうという気持ちが沸かないものです。たとえ自部署の改善計画を立てて、すべてをお膳立てしたところで、モチベーションの低い人たちをマネジメントして行動に駆り立て、立案した計画を遂行するのはとてもむずかしいものです。
今日はやる気満々だったけど、明日になればそのやる気はどこかへ行ってしまう、そんな不安定なものがモチベーションと言われるものなのです。
三日坊主という言葉は、何かを続けるのは難しいということを表現したものですが、これはまさにモチベーションが3日以上続くことが少ないということを表しているわけです。
では、どうしてモチベーションは保つことが難しいのでしょうか。
一つは、何かを成し遂げた先にある快楽よりも、より身近な快楽を人は優先させてしまいがちだからということがあります。
例えば一念発起してダイエットを始めた人がいたとします。毎日どんな運動をして、どんなものを食べ、どのくらいの期間でどれくらい痩せるという具合に目標を明確にして取り組み始めたけれど、それをきちんと遂行できたのは最初の2~3日だけで、そのうちなし崩しに運動をやめ、好きなものを好きなだけ食べてしまうもとの生活に戻ってしまったとします。
これは、自分が思い描いているダイエットが成功した自分の姿を実際に手に入れるという未来の大きな快楽よりも、運動をせず楽をしたいとか、美味しいものを食べた時の幸せ感を得るとかいう、ごく目先の小さな快楽を優先した結果なわけです。
人は単純な生き物ですから、遠い未来にある不確定な事実よりも、目先の確実なことを選択したがります。まだ見ぬスリムできれいな自分という漠然とした目標はイメージにしくいですが、運動をサボって楽することや美味しいものを食べたいという欲求は、確実に充足できることがわかっているからです。
まさに、痩せるということに対するモチベーションが下がり、ダイエットにコミットできなくなってしまうという事例です。
健康のために朝早く起きてウォーキングをしようと計画してみたけれど、つい目先の眠気を満たしたいという欲求に負けてしまい寝坊してしまうとか、成績を上げたいから勉強を頑張ろうと決心したけれど、面白いテレビ番組をどうしても見てしまうといったことも同じ理屈です。
私のライフコーチの師匠が起業しようとしている受講生たちに話すことの中に、「買い物するよりメルマガを書くのが好きになりなさい」という言葉があります。
買い物というのはお金を失うことであり、目先の快楽を優先した行動ですが、メルマガを書くこと(blogとかもそうですね)はビジネスの一部であって収入につながることだから、将来への投資になるという意味です。
モチベーションを保つ上で、私はこの「好きになる」という状態が重要なのではないかと感じます。
将来の自分の姿を思い描いてダイエットをするというのは、先の見えない遠い未来に向かってひたすら走り続けるようなものなので、やはりなかなか続けるのは難しいと言えます。
だったら、日々のダイエットそのものを好きになるような工夫をして、毎日それをするのが楽しみになるように仕掛けるのです。
きつい運動は嫌になるだけですが、それをしたら自分に何かご褒美となるようなものを準備するとか(カロリーの高いものを食べるということ以外で!笑)、そういった日々の努力が楽しみになるような仕掛けです。
他人のモチベーションマネジメントも同様で、組織が目指す目標を高々と掲げ、そこに向かって努力しろとお尻をたたくだけでは人は動きません。
それをすると何かいいことがあると毎回思ってもらえるような仕掛けを準備するのです。
そしてその仕掛けを、組織を構成するメンバーたちに自ら考えてもらうのもいいと思います。
それは現実的であり、すぐに手が届くと感じられるものが理想です。
そうすると、遠くにある大きな快楽を実現するという感覚がなくなって、身近な快楽を積み重ねていったらいつのまにか大きな快楽を得ていた、ということになります。
モチベーションを下げることなく、目標が達成できるというわけです。
要するに、鼻先にニンジンをぶら下げて馬を走らせゴールさせるのとおんなじですね(笑)
何かを成し遂げたいと思ったら、是非この考え方を試してみることをお勧めします^^
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