人生にはいいことなんて長くは続かない。
そんなネガティヴ思考に支配されることになってしまったある女性のお話・前編(リンク先参照)に続き、本日は後編をお届けします。
人生で最大の出来事、それは、愛する人の裏切りでした。
心から愛し、信じていた人に、何年もの間嘘をつかれ続けていたことに気づいた時、彼女は生きる気力を失います。
もう生きている意味がない。
自分には価値がない。
誰かに愛されることなんてない。
だから幸せになんてなれない。
日々繰り返される無限思考の中で、彼女の潜在意識には強く強くそう刻み込まれていきました。
人を信じることができなくなり、人との関わりを断って、自分自身で築いた堅牢な壁の中で生きる数ヶ月間を過ごしました。
ですが、家族の支えによって、少しずつ生きる気力を取り戻した彼女は、やがて戦う力を振り絞り立ち向かいます。
人生と戦うことで、彼女は生きる意味を見つけるのです。
自分や大切な人を傷つけるものたちから戦うこと、それが彼女の生きる糧となったのです。
戦うためには武装しなければなりません。
すべてを失った彼女は、まず武器を身につけることから始めました。
仕事で実績をあげ、自己研鑽し、キャリアという城を築いて理論武装して、やってくる敵を蹴散らすことに成功します。
これでいいんだ。私の城で、私は安心して過ごすことができる。
誰にも追随を許さない、自分の城をもっと高く築こう。
そう思い、努力し続けました。
堅牢な城は、自分を守り、他者から「立派な城だね」と褒めてもらうためのものであることに、自分でもうすうす気づいていました。
褒められ、認められることで、自分の存在価値を確認していたのです。
自分の人生は、誰からも愛されず、価値がない人間としての人生なんだということを、認めたくなかったがための思考であるとも言えます。
人生に歓迎されていない自分は犠牲者だ。
そんな可哀想な自分は、自分自身で守らなければならない。
だって、誰も守ってはくれないんだから。
そう思って、下を向いて毎日をやり過ごし、上だけを見て城をもっと高くしようと、骨身を惜しんで働いていました。
その時彼女は気づいていませんでしたが、決して前を向こうとはしなかったのです。
前を向いて、前進することを忘れてしまっていたのです。
そんな彼女にある日、何かがそっと囁き始めます。
このままでいいの?
ずっとここにいるの?
この城は本当に居心地がいいの?
あなたはここで、一生を終えるの?
実を言うと、少しずつその城は、崩れ始めてきていました。
もうこれ以上ないという高さまで築かれた城のてっぺんに登って、そこから眺める景色は、かつて思い描いていたそれとは、だいぶ違うものでもありました。
崩れ始めた城を修復しようと、様々な手を尽くして頑張りましたが、恐ろしい風や雨によって、彼女の意思とは関係なく、どんどん崩れていってしまいます。
それでも彼女は、城に居続けようと頑張ったのです。
だって、この城こそが彼女のアイデンティティ、存在意義だったのですから、当然のことです。
ですが、いよいよその城にいると、命が危ないということを知るに至ります。
耳元の囁きが大きくなって、このままでは死んでしまう、早く逃げてと告げていました。
そしてついに、彼女は気づきます。
私の居場所はここではなかった。
この冷たい城にいてはいけない。
別の場所に、自分の行くべきところがある。
そう思うようになります。
そして思い切って、その城を抜け出しました。
逃げるように城を後にする途中、落ちてくる瓦礫や追いすがる激しい風雨によって大けがを負ってしまい、身動きが取れなくなってしまいます。
どうやってこの場を去るか、どうやって本来行くべき場所を探したらいいのか。
ただうずくまり、嵐が過ぎ去るのを待っていることしかできなかった彼女の前に、あるとき一筋の光が差しました。
彼女はその光に導かれるように、怪我の癒えない身体を引きずって、歩き始めたのです。
するとどうでしょう。
その光は、彼女の自己否定や罪悪感、犠牲者として生きてきたこれまでの人生を、すべて癒してくれたのです。
その光の中には、たくさんの仲間がいました。
彼らに支えられ、気付かされ、歩むべき道を見つけることができました。
ここにいてもいいんだ。
そう思える場所を、彼女はやっと見つけたのです。
すると、それまでの長い人生で感じてきたことが嘘のように消えていき、ネガティブな考えが自然と洗い流されていきました。
何が何でも城を守らなければというこだわりを捨てた今となっては、もう何も怖いものはありません。
目の前に道はありません。どこをどう進まなければならないという規制もありません。
好きな方に、好きなように進めばいいのです。
どこにだって行けるんです!
人生は可能性に満ちている。
いつからでも、どこからでも、スタートできる。
それを知った彼女は、もう何も恐れません。
恐れるものがないから、ネガティヴにならないのです。
ネガティブになりようがないのです。
広い平原を、好きなように歩く。
歩いているうちに出会った人々と支え合って、思いのまま歩いていくことができる人生とは、なんて楽しんだろう。
彼女は今、心の底からそう思っていることでしょう。
そんな彼女は今、自分と同じような思いをしている人を救うための活動をしています。
この世界の素晴らしさを、人生に苦しんでいる人たちに伝えるための仕事です。
自分自身で作り出した城に囚われている人たちに手を差し伸べて、言葉の力を使ってそこから抜け出すお手伝いをするその仕事は、とてもやりがいのある、価値あるものだと感じています。
かつては、辛いだけだと思っていた自分の人生、生きてきた路が、こんな風に人の役に立つだなんて、思ってもいませんでした。
苦しんでいる人が元気になるのを見ると、彼女もさらに元気になります。
もう、自分に価値がないと思い込んでいた彼女は、どこにもいません。
これからは、やりたいことにチャレンジし続けて、いつも楽しく明るく生きていくことでしょう。
私もそんな彼女のことを、これからもいつも一番近くで、応援しサポートし続けたいと思います。
彼女が死ぬその時まで、彼女の一番の理解者として。
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