時代が変わり、色々なものごとの流れが変わってきたなという印象を、さまざまな局面で感じます。
個人的には人生の逆風に翻弄された2年間の天中殺が終わり、ここから何かが切り替わるという実感がすごい勢いで押し寄せてきている感覚です。
もともと私は、物欲が結構強い方でした。幼い頃、家が貧しくて欲しい物が買ってもらえなかった反動なのか、それとも持って生まれた性質なのか、モノに執着する傾向が強かったように思います。
現代社会は物質社会と呼ばれ、昔に遡れば三種の神器と言われた洗濯機・テレビ・冷蔵庫を揃えた家が憧れの的だったこともありました。モノがあるということはお金持ちの象徴でしたし、豪華な家に住み大きな外車に乗って、仕立てたスーツを来て高級レストランに出かけるといった生活を送ることがいわゆる「成功者」の形だったわけです。
特に戦後の日本は占領軍にさまざまな物事をコントロールされ、貧困と飢餓にあえいできた経験もあり、元来持つ勤勉で努力家な面が発揮されて、急速に復興を遂げることになりました。辛かった過去を日本人みんなが大きな傷と感じていたために、欧米に追いつけ追い越せを合言葉に励んだ結果、今の発達した国を作り上げることができ、結果として物質に価値を置く社会になったのだと思います。
しかし何年か前から少しずつ、物質よりも個に重きを置く時代になってきたようで、収入はそれほど欲しくないけど自由が欲しいとか、あまり出かけずに家で過ごすことが好きだとか、彼氏彼女がいなくても不自由を感じないだとか、そんな傾向が出てきたように思います。
それが徐々に強くなり、昨年あたりからさらに個を深く見つめることを好む人々が増えて、結果的にスピリチュアルなものが以前より広く浸透しているような印象を受けます。
「スピリチュアル」という言葉が少し誤った方向性で受け止められる傾向にあるため、聞いただけで毛嫌いする人たちもいますが、結局私たちはお金やモノをいくら持っていても、最終的には単なるスピリット、魂の存在なので、毛嫌いする理由は本当はないはずなんですよね。
私は看護師として、新卒の時にある県立のがんセンターに就職しました。
そこに入院しているのは文字通りがんの患者さんがほとんどで、治療が成功する人もいれば、治療の甲斐なく亡くなる方もたくさんいました。
亡くなっていく患者さんを見ていると、どんなにお金持ちでもどんなに社会的地位が高くても、亡くなるその時に誰もそばにいてくれない人もいました。
一方で亡くなる前から家族や友人の面会者が絶えず、多くの愛する人達に囲まれながらお別れする人もいました。
いくら頑張って尽くして働いてきた人生でも満足して死ねるわけではないし、特にがんという疾患の場合は死に直面しながら最期の時を過ごすわけですから、スピリチュアル・ペインといわれる霊的な痛みが強くなり、苦しむ人が多くいらっしゃいます。
自分の存在意義や人生の意味、昔できなかったことやしてしまったことに対する後悔などを感じ苦しむ霊的な痛みのことを、スピリチュアル・ペインといいます。
スピリチュアルという言葉は、立派な医療用語のひとつなんですね。
要するに、結局私たちが死ぬ時は、スピリットの存在を一番大きく感じるということです。物質であるからだを失う時、本当はからだではなく魂が自分の本質であるということを知り、これまで魂をないがしろにしてきたことに気づき愕然として、激しく後悔するのです。
私は去年までの天中殺の2年間で、自分の存在意義すら脅かされるような体験をしました。
そのことが今後の人生や、スピリチュアルなことに真剣に目を向けるきっかけとなったので、苦しかったけどこの2年間は、私にとって必要不可欠な時間だったと感じています。
モノを求めるのはこころが満たされるためであって、モノを所有することが目的になってはいけないということも学びました。
ブランドものが大好きで、高価な服やらバッグやらを借金して買いあさり、しまいには自己破産してしまう人もいます。結構有名な方にもいるようなので、ご存じの方もいらっしゃることでしょう。
そういう人の場合、自分の中の満たされない思いだったり、ストレスだったり、そんなものを一時的にごまかすために、「ブランド品を買う」という行動を取ってしまうのだと思います。一種の中毒のようなものです。
でも、「ブランド品を買う」という行為が終われば、実際に手に入ったブランド品そのものには興味がなくなってしまい、高いバッグが無造作にクローゼットの中に押し込まれ型崩れしてしまい、二度と使えないし売ることもできないような状態にしてしまうわけです。
モノは、それが自分にとって必要だという理由や、自分の魂が喜んで満たされるものを買うようにすべきです。
時代は少しずつ、そのことに気づき始めているのではないかと感じます。
物欲が強かった私も、買ってもどうせ使わなかったり押入れの中にしまい込んだまま忘れている小物などを見るにつけ、モノなんて所詮役に立たないものがほとんどだと実感するようになってから、本当に必要なものだけを買うようになりました。
心が満たされればモノに走ることはなくなるのだと、実体験から理解することができたというわけです。
死ぬ時にどうありたいか、それを考えて生きる。
そろそろそんな方向にシフトした方がいい時代かも知れませんね。
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