昨日は今勤務している病院で認知症研修があり、参加してきました。
当院には精神科医が常駐していて、高齢の患者さんの認知症の症状などについて相談に乗ってくれるのですが、その医師から認知症疾患の概要と発生要因、予防法などについての講義があり、とても参考になりました。
日本ではここ10年ほどで、アルツハイマー型の認知症が急激に増加しており、高齢者の割合が増えていることがその一因と言われていますが、それだけにしてはこの病気の増加率は急激すぎるという話もあります。
アルツハイマー型認知症の治療薬が開発された年あたりから急にこの疾患名の患者さんが増えているように見えるため、治療薬を処方するために病名をつけるケースが増加したということもあるでしょうが、それにしても多くの人が認知症と診断されているということに変わりはありません。
講義の冒頭で、認知症がもたらす社会的リスクは以前から米国では危機的に捉えられていたということが紹介されました。
そのひとつは社会的損失で、認知症になってしまった人が働けなくなるばかりか、介護のために仕事を辞めなければならない家族の存在などによって、本来働き盛りの年齢の人が介護人員として取られてしまうことによって、おのずと生産性がゼロに近づき、結果としてGNPの低下につながるということです。
もうひとつの社会的リスクは衝撃的で、認知症は介護者の寿命を縮めるというエビデンスがあるということです。介護する人は、終わりのない介護のために心身のバランスを崩し、うつ病になって自ら命を絶ったり、介護によって腰や膝などを痛め、そのまま自らも介護が必要な状態となり合併症を起こして亡くなったりという具合に、介護をしていない人に比べると寿命が短い傾向にあるというのです。
国はここ数年、オレンジプランを打ち出して認知症についての啓蒙活動を行っていますが、日本で最近になってようやく認識されるようになったことが、米国ではかなり以前から指摘されていたということに驚くと同時に、認知症というのは単なる患者自身の問題だけでなく、社会的にさまざまな深刻な影響を与えているということを再認識することができました。
その講義の中で、認知症の発症原因として、①うつ病の既往があること、②糖尿病であること、③難聴があることの3つが挙げられていました。難聴は高齢になると発症することが多いのである程度仕方ないとして、②の糖尿病と①のうつ病については、予防する手立てがあると感じました。
予防法としては3つ挙げられていて、①食事に気をつける、②運動を習慣化する、③睡眠を充分取るというもので、いずれも生活習慣を整えるということに終始しています。
特に気をつけたいと感じたのは、70代でアルツハイマー病を発症する人に多いのは、酒飲みで野菜を食べないという生活習慣だそうです。野菜にはさまざまな酵素やポリフェノールなどの体にいい成分が含まれていますが、それを摂らず活性酸素を増加させる飲酒を長年続けることによって、老化が進んでしまうというわけです。
もともと私は、病気になりたくてなった人はいないという考えでしたが、最近ではちょっと変わってきていて、人は病気を自ら引き寄せているというのが持論になっています。
少し前に書いた記事でも、病気とマインドについて触れていますので、よろしかったらそちらもご参照ください。
食事については、熱で変性したタンパク質が認知症の一因になるという説もあって、主にから揚げなどの肉を高温で調理したものを多く摂ることを控えるべきという記事を目にしたことがあります。やはり普段から体にいいと言われているものを多く摂り、避けたほうがいいと言われているコレステロール含有量の高いものを減らすといった配慮が必要だと感じます。
運動と睡眠についても、それが大切だというのは自明の理で、反論する人はだれも居ないのではないかと思うほど重要です。
そしてこれらはすべて、認知症だけでなくすべての疾患に対する予防のために、とても重要なことです。
何の新規性もなく、何を今更という印象を持たれるかもしれませんが、認知症ですら生活習慣を整えることで予防できるんだと考えたら、私は逆に希望の光が見えてきたような気がしました。
歳をとったらある程度仕方のないこととして捉えていた認知症という疾患を、若いうちからの心がけで予防することができるなら、取り組む価値は充分にあると感じるのです。
先に挙げたように、認知症は本人のみの問題ではなく、社会的に大きな損失をもたらします。
それだけでなく、介護する人たちに過大な負担を強いることにもなりかねません。
過去にこのblogで、家族を介護する若者の悲劇についての記事も書いていますが、これは少子高齢社会である現代の闇の部分だと感じます。私は自分の娘にこんな思いをさせたくないので、認知症を含む介護が必要な疾患で娘などの介護者に迷惑をかけるようなことは絶対したくないと思っています。
認知症を含む病気にならないために必要なのは、心身を良い状態に保つことです。
そしてそのためには、食事や運動、睡眠に留意した生活を送ることです。
当たり前だと一蹴されてしまうようなことですが、そのアタリマエのことを実践できている人が、果たしてこの世の中にどのくらいいるでしょうか。
近い将来、自分自身と周囲の大切な人を辛い目に遭わせないために、今からできることを意識して始めることを、お勧めしたいと思います。
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