スピリチュアルなおはなし

潜在意識は記憶の貯蔵庫

 12ステップセッションをやっていると、忘れていたはずの記憶がふと呼び起こされることがあります。

 強烈な印象を与え、鮮明に記憶していることというのは、普段思い返すことは少なくてもその気になればいつでも「あんなことがあった」と話すことができるものですが、生きてきた長い道のりで見たり聞いたり経験したことは膨大すぎて、そのすべてを意識の中にとどめておくことはできません。

 だから、日常の些末なことはきれいさっぱり次から次に忘れていくものだと思われていますが、それはどうやら違うようなのです。

 忘れていたと思ってるのは自分の意識だけで、本当はすべてのことが記録されています。潜在意識と呼ばれる部分が、その膨大な記憶を保管している貯蔵庫です。

 日常のほんの小さな出来事をすべて意識の中にとどめておくことはできないので、そういう記憶は普段使わない記憶を溜めておく潜在意識の中に保管しています。家の中にモノがあふれてきたので、外に貸し倉庫を借りてそこにあまり使わないけど捨てられないものを預けておくような、そんなイメージでしょうか。

 日常の些末な経験だけが、潜在意識に保管されるのではなく、実はとても重要な記憶が、そこに紛れ込んでいることがあります。

 意識の中にとどめておきたくない、辛い記憶などがそれにあたります。

 思い出したくない、忘れたい、そういう思い出は潜在意識の奥底にしまわれて、普段目につかないところに置いておかれます。忘れたわけではなく、実はそこにまだあるのです。でも普段思い出さなければ辛くないわけですから、意識が痛みと感じる記憶を遠ざけ、潜在意識という貯蔵庫に押し出してしまいます。そして固く鍵をかけて、忘れたことにしているのです。

 例えば私の場合、人の輪に入っていくことができないとか、自分の存在や権利を主張することができないというチャレンジがあるのですが、その原因が4歳の頃の入院生活にあることが、つい先日わかりました。

 猩紅熱という感染性の疾患にかかり、2週間の隔離入院が必要になったときのことです。隔離入院だったので親の付き添いはなく、ちょうど母が上の弟を妊娠していた出産間近だったため、感染対策上面会はできない状態でした。

 仕事の合間を縫って父や叔母が来てくれていたので、全く面会がないわけではありませんでしたが、それでもやっぱり4歳という幼い子供にとって、親から離れて入院生活を送るのはとてもつらいことでした。

 8人くらいの子供たちが生活する部屋で、私は一番小さかったこともあって、仲間外れにされたりいじめられたりしていたのを覚えています。薬はまずくて飲みたくないし、部屋も居心地がよくないし、何と言っても広い病棟で迷ってしまい、自分の部屋に戻れなくなってしまった時のことは、辛い思い出として残っています。

 私は入院中に5歳の誕生日を迎えました。父がプレゼントを持ってきてくれてお祝いしてくれました。嬉しくて開けてみると、スピログラフと呼ばれる歯車のようなパーツを使ってお絵描きができるおもちゃが入っていました。入院中に退屈しないようにと、父が選んでくれたのだと思います。色とりどりの歯車パーツを使ってお絵描きをしてみたらとても楽しくて、何より誕生日であることが嬉しく、自慢したいような気持になっていたのを覚えています。

スピログラフというお絵描きツール。いろんな形が作れて楽しいのです。

 面会時間が終わり、父が帰ると、同室の子供たちのボス格の子がやってきて、私が誕生日プレゼントにもらったスピログラフを箱ごと取り上げ、自分のベッドに持って行ってしまいました。ほかの同室の子供たちを自分のベッドの周りに集め、スピログラフで遊び始めたのです。私の誕生日プレゼントなんだから、私もそれで遊ぶ権利があると思い参加しようとしたら、おまえはあっちに行ってろと追い払われ、仲間に入れてもらうことができなかったのです。

 自分のおもちゃなのに。父が買ってきてくれた誕生日プレゼントなのに。
 どうして自分は遊べないの?

 権利を取り上げられたショックと、誕生日プレゼントを奪われた悲しさ、理不尽さでいっぱいになりながらも、私は自分のベッドに戻り、私のおもちゃで遊んでいる子どもたちを遠くから眺めることしかできませんでした。あの時の気持ちは正確に言葉にするのが難しく、ただ悲しかったとしか表現できません。2週間もの間母親に会えず、父親が持ってきてくれた誕生日プレゼントを奪われ、不味い薬を飲まされ仲間外れにされる入院生活がどんなに辛いものだったか、今思い出すだけでも涙が出そうになります。

 私にとっては遠い過去の話であり、子どもの頃のたった2週間の出来事だった入院生活の間に、親から引き離され病院という小さな「社会」で一人で生活するという経験をしたわけです。おそらくそれが私にとっての「社会」の原体験だったのだと思います。その時、他者から拒まれ権利をはく奪されるという強烈な経験をしたわけですから、私の中で「社会というのは怖いところ、人は自分の権利を奪うもの、私は存在を主張してはいけない者である」という意識が作られたのだと思います。出産間近で仕方なかったとはいえ、母に会わせてもらえなかったことも傷になっていたはずです。大切な人に会う権利をも奪われていたわけですから、私は権利を主張しても叶えられないのだということも学んでしまったのです。

 入院生活はインパクトのある出来事でしたが、おもちゃを取り上げられ仲間外れにされて辛かったことは、普段意識に上ってくることはなく、潜在意識の貯蔵庫の中に封印されていたのだと思います。12ステップを行う過程でこのことがふと思い出され、辛い経験として目につかないように閉じ込められていたのだということに気づきました。

 社会の中で、目立つことはなるべくしたくない、権利を主張したくない、人から仲間外れにされたくない、そんな風につい考えてしまい、人との距離を保とう、接触を避けようとしてしまうのは、それが原因である可能性があると思います。そんな風に、人は嫌な記憶を潜在意識の奥底に押しやることで、受けた傷を見ないようにしているのです。見なければ痛みを感じることは少ないけれど、傷が完全に治っているわけではないので、見えない何かが痛むのをたびたび感じることになります。それが私たち人間にとってのブレーキやブロックとなり、行動を阻んでいるのです。

 自分でも説明できない不可解な反応があるとしたら、それは潜在意識に貯められた過去の経験が原因である可能性が高いといえます。ですが、その原因を見つけ出し解放することで、潜在意識から原因を排除することができます。ポジティブイメージを繰り返し意識することで、ネガティブな潜在意識をポジティブなものに書き換えることができるのです。
 それが、セルフイメージの転換です。

 セルフイメージの転換は、なかなか一人では難しいものです。長年の思い込みや刷り込みというのは恐ろしいもので、取り除こうとしても簡単にはいきません。頭でわかってはいるんだけど行動できないという現象がまさにそれにあたります。

 次回はその「わかっちゃいるけどやめられない」原理について書いていく予定です。

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      Facebook:スピリチュアルライフコーチ 栢森まこと
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